研究成果のポイント

・アカエイを含む子宮乳型板鰓類は,子宮から乳様物質を分泌し、胎仔に与えると言われている。子宮乳の役割と胎仔の発達段階によるその変化を明らかにすることを目指して、妊娠段階ごとの子宮乳成分の変化を詳細に調べた。

・子宮乳の性状や粗成分は妊娠段階によって変化し,妊娠初期は薄く、妊娠中期に濃くなった。これは卵黄が枯渇して退縮する中期胎仔の成長を、卵黄に替わってサポートするためと考えられる

・全妊娠期を通して、子宮乳には抗菌や鉄の輸送に関わるタンパク質が含まれており、胎仔の健康維持と呼吸の補助に関与すると示唆された。また、妊娠中期には、板鰓類(サメ・エイ類)の骨格形成を担う軟骨の伸長を促すタンパク質が検出された。

・板鰓類の卵黄に含まれないC18:2やC18:3、脂質代謝に関与するC16:1などの脂肪酸が子宮乳に豊富に含まれており、アカエイ胎仔の急激な成長を支えると示唆された。

・以上のことから、アカエイ子宮乳は卵黄からの栄養供給が減少する胎仔の急激な成長を支えるために豊富な栄養や成長因子を含む可能性があると結論づけた。

原文(英語)のリンク先が開きます。
DOI: 10.1111/jfb.14716

日本語の解説文が開きます。