研究成果のポイント イルカの血清アルブミン(以下SA)では,他の哺乳類SAにおいて主たるラジカルスカベンジャーとして働くフリーのシステイン(34Cys)がセリンに置換されていた(以下,C34S).しかし,この置換にも関わらず,イルカSAがヒトSAよりも高い抗酸化作用をもつ,という定説では説明できない現象が認められた.生化学性状および構造解析により,イルカSAでは表面の疎水性が減じる残基置換が起きており,17対あるSS結合のうち2対で結合が不安定になる原子の配置が認められた.これらのデータは,イルカSAがヒトSAよりも不安定で,SS結合が乖離することによりフリーのチオール基を提供して抗酸化力を高めていることを示唆している.以上のことから,バンドウイルカSAは高い抗酸化作用を発揮し,繰り返し潜水をすることによりおきる酸化ストレスに対抗していると結論づけられた.なお,C34S置換は複数系統の水生哺乳類で平行して起きており,この置換が哺乳類の水中適応になんらかの重要な役割を果たしたことも併せて示唆された. 原文(英語)のリンク先が開きます。DOI: 10.3389/fphys.2020.598451日本語の解説文が開きます。